てるてる坊主の一生 中編

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てるてる坊主の一生 中編

(水曜日) 湿気が増してきた。 ティッシュの身体は、湿気に敏感だから分る。 雨は、着実に近づいてきている。 立花家は家族揃って朝食中のようだ。 『おっ。花ちゃん、箸の使い方がまた少し上手になってきたじゃないの!一年前よりよっぽど上手!』 『なんだなんだ、健太は苦手なトマトも文句を言わなくなってきたな!偉いぞ』 おいおい、ママさんにパパさんよぉ。もっと2人の成長に気づいてやんなきゃダメじゃないの。 全く。 (木曜日) 健太・花:「「行ってきまーーす」」 健太と花が元気良く玄関を飛び出していく。 背中には、二人ともランドセルを背負っている。 なんてことはない、学校に向かうのだ。 ママ:「はぁーい。いってらっしゃーい。」 オイラは、学校というものを良く知らないが健太も花も、元気に出て行くのできっと楽しい所なんだろう。花ちゃんのランドセル姿も段々板ついてきたもんだ。 手を引くの健太もお兄ちゃんらしくなってきたな。 『行ってらっしゃい!今日も楽しんでこいよー。』 (金曜日) 今日の天気は、晴れ時々曇り。 リビングには、リズミカルな音楽が流れている。 リズムに合わせて、フゥッ。ハァッ。息継ぎする ママさんはテレビを前にリズム運動中だ。 『頑張れ頑張れマーマさん、頑張れ頑張れマーマさん。それっそれっ』 こんな合いの手も今ではルーティン化していて自然応援してまう。 最近のママさんの口癖で「結果にコミットしてこない」とぼやいているが、毎日見ている俺にはわかるぜ。 始めた頃よりだいぶ引き締まってきたぜ。 パパさんはなんで気づかないもんかねぇ。 そういうところが夫婦円満の秘訣なんじゃないのかねぇ。 (土曜日と日曜日) 灰色の雲がどんより泳いでいる。 水分を含んでいてとっても重そうだ。 この休みの立花家は、みんなで外出。 休日の家族サービスは、パパさんの腕の見せどころってもんだ。 窓から見てたが、みんな楽しそうに車に乗り込んでらぁ。 水族館? どんなところかは知らないが健太も花ちゃんもワクワクしてたからきっと楽しい場所なんだろうな。 『まあ、オイラが留守番してるから、楽しんでこいよー。帰ってきたら土産話楽しみにしてるぜぇ。』 パパさんがいろいろ準備してた事くらいオイラにはお見通しなんだよ。いつも通りサプライズは大成功だな! (月曜日) ポツリポツリと雨が降ってきた。 いよいよ、本格的に梅雨入りしたみたいだ。 外には、傘を指してる子供たちが長靴をビチャビチャ楽しそうにしている。 こうして見ると、雨も悪いことばかりじゃ無いかもな。 健太と花:「「ただいまー」」 ママ:「おかえりなさい」 花:「帰ってくるときねぇ。水たまりがあってねぇ。いっぱいパシャパシャして楽しかった!」 ママ:「あらあら、良かったわねぇ。」 花の話を笑顔で聞くママさんと、花の濡れた髪をタオルでゴシゴシしている優しいお兄ちゃん。 『花ちゃんは、ほんとに元気だなぁ。見てるこっちも元気になってくるぜぇ!全く見てて飽きないぜ。』 『健太も、もうしっかりお兄ちゃんだ。これは将来が楽しみだな』 去年とまた違う2人の仕草。 『このままずーと見ていたい・・・。』 『なぁ。同胞よ。お前らも羨ましくなってくるだろぉ?オイラもあの2人の頭を撫でてやりてぇもんだぜ。』 ・・・・・・・・・・・ 『今日も話す気分じゃ無いってぇ?まあ気が向いた時に声でもかけてくれや』 (火曜日) ザーザー。ザーザー。叩きつけるような雨が窓から、見える景色をボヤけさせる。 『おいおい、どおした花ちゃん』 学校から帰ってきた花ちゃんは、グスングスンと泣いているようだ。 ママさんは、まだ気づいていない。 『どうしたんだよ、花ちゃん。』 心配だ。いつも元気いっぱいの花ちゃんなのにどうしちまったんだよぉ。 『おーい、花ちゃん!おーーい!どうしたってんだーー?おーーい!』 声を振り絞ってみるが、花ちゃんは気づかない。 やっぱりダメだ。 オイラが話を聞いてやりたいだが、どうしてかオイラの声は、みんなに届かないみたいなんだよ。 なんとも、もどかしい。 落ち着かない。 もう一度声を振り絞る。 『花ちゃーーーーーん!』 ピクッ。 花が顔を上げる。反応した。 花:「ママ?」 花は、キッチンに向かって歩いていってしまった。 『今、オイラの声に気づいた?いやいや、まさかまさか。この一年、何度も何度も何度もみんなに声をかけたけど一度も気づいちゃあくれなかった。』 『きっと気のせいに決まってる。』 ママ:「あらあら、花ちゃんどうしたの?どうして泣いているの?」 ママさんが、花ちゃんを抱っこしながらリビングにやってきた。 花:「今日学校でね。みんなが遠足の日は雨だって言うの。花は、てるてる坊主さんにお願いしたから大丈夫って言ったのに。みんな遠足の日は雨だって信じてくれなかったの、、、」 『・・・・・・・・・』
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