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てるてる坊主の一生 後編
(水曜日)
今日も酷い雨。
花ちゃんは学校から帰ると不安気に外を眺めている。
『そんな悲しそうな顔しないでくれよ、花ちゃん。オイラ頑張るからさ!もうちょっと待っておくれよ!』
その時。
ママ:「花ちゃんっ。」
ママさんが小走りで窓辺にやってきた。
花:「どうしたのママ?」
ママ:「今天気予報でねっ。金曜日曇りになってたっ。」
花:「ほんとにっ?!嬉しーー。」
ママ:「でも、まだわからないからねぇ。あんまり期待しない方が良いかも・・・・」
『なら、言わないであげろよなぁ。花ちゃんが期待しちまうじゃねぇか。まったく、ママさんは気が早いったら無いぜ。』
まぁ、あんな花ちゃんの顔見てたらそんな言葉もかけてやりたくなるもんなぁ。
分かるぜ。ママさん。
花:『でも、嬉しいの。ありがとう。てるてる坊主さんっ。』
花ちゃんと目が合う。
オイラを見てくれてる。
『まだ、晴れた訳じゃないのに、花ちゃんったら気が早いって。』
『でも、明日でお別れかぁ。ひと言でも多く声を掛けてもらいたい。』
(木曜日)
小雨がポツリポツリと降った後、空は曇天。
雨は降っていない。
夕方の立花家は、はしゃいでいた。
明日の天気予報が 【曇り時々晴れ】 になっていることに。
この、はしゃぎ様を見ていると、てるてる坊主冥利に尽きるってもんだ。
ふと、ママさんと目が合った。
ママ:「あ、これも花ちゃんの作ったてるてる坊主さんのおかげじゃない? ありがとうてるてる坊主さん」
パパ:「そうだな。花ちゃんが気持ちを込めて作ったんだもんな。ほんと、ありがとうございます。」
健太:「花ちゃん、良かったね!てるてる坊主さんありがとう。」
花:「てるてる坊主さん、ありがとう。」
立花家みんなの視線がオイラに向けられた。
特に花ちゃんの笑顔はたまらないものがある。
『おいおい。止めてくれよ。照れちまうよ。』
『まあ、なんだ。一年も他より長生きさせてもらった恩返し、、、いや、一年みんなの成長を見れたことへの感謝の気持ちってもんだな』
これでお別れだ。
てるてる坊主としての仕事を全うした。
いや、させてもらった。
既に、立花家のみんな楽しそうに、テーブルに腰掛け夕食の準備をしている。
『ママさん、毎日のリズム運動ちゃんと成果が出てるから諦めるなよっ』
『パパさん、家族サービスいつもご苦労さん。ただ、サプライズも良いがみんなで行き先を決めるのも楽しみの一つだぜ』
『健太、もう立派なお兄ちゃんなんだらしっかり花ちゃんを守ってやるんだぞ』
『花ちゃん、俺を作ってくれてありがとう。最高にファンキーな一年だったぜ』
『みんな、ありがとう。』
おかしいなぁ。視界がボヤける。滲んで見える。
なんだ?窓が結露でもしてんのか?
ティッシュが湿る。
テーブルには、たくさんの料理が出されている。
みんな楽しそうに、おしゃべりしながら食べている。
みんな笑顔だ。
きっと明日の今頃には、この景色も見られなくなっているだろう。
『もっとみんなと一緒に居たかったなぁ。』
『一年でこんなに人は成長するんだ。来年はもっと違うみんなが見れるんだろうなぁ』
ここで、少し前のママさんと花ちゃんの会話を思い出す。
【雨が降ったら、遠足は延期になるだけ】
もし、雨が降ったらもう少しはこの家族を見守れるのかなぁ。
ああ。
『雨、、、降らないかなぁ』
あっ。
自然と口からのこぼれてしまった。
ひゅーー。隙間風が入る。フワッとカーテンが揺れる。
ママさんが換気で少し窓を開けていたみたいだ。
その時、ビュウッ。
突風が吹いてカーテンが、バサバサッと大きく膨らんで揺れた。
『うわあっ。』
あ、あれ?なんだこれ。
視界が反転している。
やってくれたなぁーー。カーテンさんよぉーー。
俺の独り言、いつも無視するくせによぉ。
全くよぉ。
これじゃ、逆さてるてる坊主じゃないか。
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