第六話

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第六話

 案の定、ダメだった。  初日から散々だった。  場所が違うだけでこんなにも違うのか。事務所の雰囲気とか個室とか。  綺麗すぎる。  スタッフもほぼ女性で男性は若い。  良い環境すぎて反対に効果出ない、そんなこともあるのか。  神奈川の事務長がスタッフに声をかける時もセクハラまがいの発言をしたが完璧にスルーされ、スキンシップだと触ろうとすると男性社員がすかさず間に入る。  照明も常に明るく女の子たちのトーンの高い声、笑い声が絶えない。  事務長も自分がいつもしているようなことが出来ず借りてきた猫のようである。  約束通りおいしいところに連れて行ってもらうことにした。2人きり、というのは嫌だったが。  相変わらずずっと雨。頭が痛いし気持ち悪いし。だから断りたかった。明日からは夜も働く。夜が1番稼ぎ時。だけどこんな時限って生理。一週間の出張のうち半分無駄にした感じだ。  本当は一週間泊まるスタッフ用の部屋のベッドにうずくまりたかった。  でも他のスタッフにお店の名前を言ったらお薦めですよ、と言われた高級料亭……滅多に食べられない、そんなところ。娘を人の家に置いて食べるだなんてあれだけど。  事務所の近くらしくって持ち帰りもできるらしいから事務長をおだてて娘やママ友たちのお土産を持って帰ろう、最終日には。
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