目覚めの悪い朝

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目覚めの悪い朝

 が追い掛けてくる。  男なのか、女なのか分からない。  それが人なのかさえも分からない。  姿の見えない何かに、私は追われていた。  暗闇の中で、遠くに点滅を繰り返す街灯が見えてきた。  あそこまで行けば、追ってくるものの正体が分かるはず。  もつれそうな足を必死に動かし、十字路の手前にある街灯へひたすら駆けていく。  あと……少し。  十字路は、もう目の前だ。  点滅を繰り返す街灯の下で、おそるおそる後ろへ振り向いた。 「ハァハァ……ハァハァ……」  決まって、ここで目が覚める。  全力で走ったあとのように、私は肩で息をしていた。  カーテンの隙間からは、朝日も()していない。  目覚まし時計を見ると、まだ夜中の三時だった。  隣に彼氏でもいてくれたら。  同じ屋根の下に、家族がいたら……。  こんな時、一人暮らしだと急に心細くなる。  背中と首が汗でびっしょりだ。  肌に張り付いたパジャマが気持ち悪い。  だけど、着替えようにも起きる気にはなれなかった。  しかたなく、そのまま横になって目を閉じる。  瞼の裏に残っているのは、今見たばかりの……あの夢だ。  暗闇の中で、ポツンと点滅を繰り返す街灯。  私を追い掛けてくる足音。  は、いったい何だったのか?  街灯の下で振り返った瞬間に目を覚ましたせいで、何も分からない。  そこにたどり着くまでの間、私は走りながら何度も振り返った。  暗闇の中にあったのは、姿の見えない足音だけだった。  結局、朝まで一睡もできなかった。  いつもこうだ。  毎晩、同じ悪夢で目覚めるのも、今日でちょうど一週間目になる。
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