とある兄と妹の話

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俺は、ベンチに座り、膝の上に、水に浸している短剣を置いて、 マイを待ち続けた。 28日目の夜、マイは、俺の目の前に現れた。 ゆっくりと、近づく姿に、もうマイの姿は、どこにも無かった。 白色の狼が、尻尾を揺らしながら、 よだれをたらし、こちらに向かって来る。 俺の血が、それ程、欲しいのか。 10m先で、狼は止まった。 そこから、一気に、俺を襲う気だろう。 俺は、目を逸らさず、水に浸したまま短剣を両手で、握った。 睨み合ったまま、沈黙が続く。 マイは、もう俺の事は、覚えていないのだろうか。 目をずっと見ていると、どこか悲しそうにも見えた。 その瞬間、マイは、強い脚力で、一気に間合いを詰め、襲って来た。 狼の口が、俺の首を狙う。 あまりの速さだったので、 俺は、咄嗟に、水から出した短剣を、下から上に振りかざした。 短剣は、狼の左の前足を、切った。 それは、プリンを切るような、感覚だった。 こんなに簡単に切れるものなのか。 俺は、その感覚に驚いてしまった。 切った足は、地面に転がった。 マイは、俺から離れ、切られた左足を咥えて、後ずさりをする。 もう、俺に短剣を握りしめられているため、マイは、退散するしかなく、 そのまま、どこかに立ち去って行った。
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