とある兄と妹の話

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俺は、しばらく動けなかった。 妹のマイを殺すという現実味が、押し寄せて来たからだった。 それと、同時に、ひと思いに殺せず、 マイを余計に苦しめてしまった、罪悪感も残る。 左足を切ってしまったため、マイは、今より走る事はもう出来ないだろう。 狼は、賢い動物だと言われている。 今日と同じ方法では、もうマイを殺す事は出来ないだろう。 俺は、空を見上げた。 雨を待つしかない。 雨が降れば、俺の匂いも、短剣の気配も消える。 昼間、どこを探しても見つからない、と相変わらず噂されていた。 どこも見つからない場所。 あの廃れた神社しかないじゃないか。
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