来栖愛の場合

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来栖愛の場合

教室に入ると、北木柚子の姿があった。俺が会いたいのはこいつじゃない。こいつといつも一緒にいる見古間里玖の方だ。 「何だお前、もう来てたのか」 「あ"ぁ? お前こそもう来たのかよ、来栖 愛(くるす めぐみ)さんよォ……」 「ヤンキーの俺よりヤンキーっぽいぞ、お前」 「うるせえ」 「見古間はどうした」 「お前には関係ねえ」 「日直の仕事、何でお前がやってる」 「お前には関係ねえよ」 「見古間に会えると思ったのに」 話にならないと思ったとき、ちょうど見古間が教室に入って来た。 「あ、来栖君! おはよー」 「うっす」 「里玖、こいつと関わると不良がうつる」 「あはは、挨拶しただけじゃない」 「お前は良い子だな……」 北木はまるで俺がいないみたいに見古間と話す。 「北木お前、本当性格悪いな」 「あ? お前こそグレてるくせに」 「俺はちょっと不真面目なだけだ」 「ちょっとじゃねえ」 「はーいはい、ケンカ、ダメでしょ」 見古間が止めに入らなきゃ喧嘩勃発間違いなしだ。本当に、見古間は偉い。兄貴の来栖 祈(くるす いのり)からも北木と同じバイト先に行っているらしいので聞いているが、北木柚子という男は好き嫌いや裏表が本当にはっきりしている。あからさまに見古間のことを好きだし、俺のことが嫌いらしい。 「見古間、手伝えることあったら言えよ」 「ありがとう、助かるよ、来栖君」 可愛い、まじ天使。社交辞令だろうとは言え笑顔でそう言ってくれる見古間を、俺は改めて好きになったのだった。
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