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♪ぼくなら いいんだ かあさんの
おおきな じゃのめに はいってく
ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン
僕は母さんに、「玲二の傘はどうするの」と聞かれた。
僕は、「かあさんのじゃのめがさにはいってかえる!」と言った。
母さんは微笑み、静かに母さんの蛇の目傘へ入るよう促してくれた。
僕は母さんの蛇の目傘に入った。
いや、正確には入ろうとした、かもしれない。
僕は、その時前を向きながら歩いていた。
だから、母さんの方を向いていなかった。
僕が笑顔で前を歩いていたら、ぽつぽつぽつ、と冷たいものが僕の髪と、鼻
と、指先についた。
僕はそのあまりの冷たさに驚き、後ずさりしてしまった。
そして、目に入った。
誰かの姿が、ではない。
傘が。
傘が、僕の目に、物理的に入ったのだ。
その時に聞こえたのは、ある声だった。
「傘を刺せばいいんでしょ」
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