テナーサックスとアルトサックス

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いつも隣りに座っている先輩。 私より背が低くてそれでも楽器の音はピカイチ。 テナーサックスのいいところをすべて詰め込んだようなそんな先輩。 ちょっと渋くてそれであって色気もある。 みんなに平等に優しい。 私は隣でアルトサックスをもっている。 いつも人当たりがいいよね、優しいし、と言われる。 私はどうやらアルトサックスの良さを詰め込んだ人物のようだった。 テナーサックスとアルトサックス。 形は似ているけど音色はぜんぜん違う。 私は先輩の音色が好きだ。 何処か儚くて瞬きをしたら消えてしまいそうで。 それであって体の奥深くにズン、と響く音。 形の良い唇から吐かれた息は新幹線のように楽器の中を伝っていく。 と、先輩がこっちを見た。 私が見ていることに気がついたようだった。 先輩は周りを見渡してダレも私達に注目していないことを確認する。 そして耳元で囁いた。 「明日は、デートだね」 私は、多分真っ赤になっているであろう顔をサックスですかさず隠す。 先輩はニコリと笑って私の頭を撫でた。 初めは兄弟みたいだね、と言われていた私達。 いつの日か周りにお似合いのカップルだね、と言われてみたい。 お互いの違う音色をみんなに聞かせられたらいいな。 私と先輩の音色が混じり合うときっといい音がするんだと思う。 完
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