第0章 序章。

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西暦1185年04月25日  長門国赤間関壇ノ浦〈=現代の山口県下関〉 知盛「平家の総大将として 最期の意地見せてやる!」 則子が幼き頃より恋い焦がれている 知盛は35歳になり一層頼り甲斐が増した 立派な武将となっておりました。 宗盛「俺は戦が苦手だ、頼むぞ、知盛。」 屋島の戦いではこのどうにも頼りない平家の総帥が判断ミスばかりしてしまったせいで… 源氏に完敗してしまったのでございます。 知盛「お任せ下さい、兄上…」 知盛は則子の顔を一瞬見て微笑みました。 20年前に知盛が正室として迎えていた明子は屋島の戦いで敗戦した際、 知盛「明子、そなたは京に帰れ。 この先奮戦はするが勝てるかどうかは 全く分からない…だからこそ…そなたには自らの人生を悔いなく過ごして貰いたい…」   明子「畏まりました…。 今までお世話になりました。」 幼い娘である沙羅と共に京へと帰していたので知盛は実質独身のようなものでした…。   則子『ようやく私は 知盛様のお側にいる事が出来るのね』 則子と知盛は長すぎた春が ようやく報われると思い心の中で 喜びを噛みしめていたのですが…。 午前中までは平家軍が優勢でしたが 源氏の総大将である源義経が禁じ手を 遣い船を漕ぐ水夫を狙い撃ち… 阿波水軍の水夫 「嫌だ、おら達死にたくねぇだ!」 平家軍最大勢力であった阿波水軍が 突如源氏に寝返ってしまいました…。 知盛「…くっ…まさか…」 これには今は亡き清盛から 清盛「知盛は戦をするため、そして 平家を勝たせるために産まれてきたのだ。」 べた褒めされた戦の名手たる知盛も 手詰まりとなってしまいました…。 則子「知盛様…」 知盛「すまない、則子」 敗戦を悟った知盛は甲冑を3枚重ね 則子は懐に宝飾品をたくさん詰め込み 手を取り合い海に飛び込もうとしました。 すると… 時忠「則子、父より先立つ事は許さん!」 自分勝手を極めている則子の父親である 時忠がまたもや2人の道を別れさせようと していたのでございます。 則子「しかしながら一族の者は皆、 運命を共にする覚悟でございます。」 則子の言葉通り知盛の母親である時子が 安徳帝を抱きまだ冷たき壇ノ浦の海に飛び込んだのを始まりとして皆、一族と運命を共にするため春の海へと飛び込んでしまいました 知盛と則子は最後でございました。 時忠「則子、そなたには 義経殿の側室になって貰いたい…」 時忠が最後に強いた道はなんと… 則子「一族の仇に嫁げなどと 父上は正気の沙汰でございますか?」 時忠「父親に対して何と無礼な! 反抗するなら無理矢理にでも連れ戻す!」 時忠は則子を強引に抱きかかえ義経に 引き渡してしまったのでございます。 知盛「義経!則子を帰せ!」 則子「知盛様~!」 知盛は愛する者の為最期の力を振り絞り 義経目掛けて刀を振り下ろそうとしましたが 義経は身軽故則子を抱えながら颯爽とその場を去ってしまったのでございます。 知盛「則子~!」 愛する者を奪われてしまった知盛は 則子の名前を叫びながら春の海へと その身を投じたのでございました。 則子「知盛様~!」 時忠「で、義経様、則子の父親である私は死なずに済みますよね?」 則子の深すぎる悲しみなどどこ吹く風の 時忠はヘラヘラと笑いながら義経に問い 義経はそれに頷きました…。 則子『この父親は…本当に最低!』 娘である則子から心の中で 何度も何度も己が詰られている事など 知る由もないこの最低男は… 時忠「何も娯楽がないところで 生きられるか!」 鎌倉幕府初代征夷大将軍である源頼朝より 僻地へ流罪を命じられこのように文句を言いながらも長生きしました…。
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