ダンスパーティの日

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 翌朝私はいつもにもまして早起きした。自分の部屋は瞬時に整え、ロージィ様の部屋へ向かう。ダリアにはエスコートしてくれる人が決まっていたから心配ない。問題はロージィ様だ。  謹慎はきのうまで。きょうはロージィ様もパーティに出なければならない。  婚約者の王太子は多分迎えに来ない。それどころかきょう、ロージィ様に婚約破棄を言い渡す予定でいる。  ドアの向こうのロージィ様は私の姿を見て目を丸くした。  私は騎士の装いでロージィ様のもとを訪れた。いつもは編み込みツインテールにしていた髪を襟元で無造作に一つくくりにして飾りの剣を帯刀し、濃紺の肋骨服に身を包んで。  理想の騎士を名乗るには圧倒的に身長が足りないけどね。エーデルワイスの身長は女子の平均以下だ。お子様体型だからシルエットは普通に少年に見えると思うけど。 「エディ? その恰好……」 「きょうは私にロージィのエスコートをさせてね。でもその前に準備だね。うんと綺麗に着飾るから期待してね」 「殿下がエディに若草色のドレスを送ったと聞きましたけど……」 「うん。送られてきた。でもそれよりも殿下の代わりにロージィをエスコートできる方が私は嬉しい。それにこれは私の決意表明でもあるの。この先ロージィにどんなことが起ころうとも、私はあなたに付き従う」  たとえあなたが国外追放されようと、私はあなたを追っていく。  私はあなたの恋人にはなれないし、王子様にもなれない。  けれどもあなたの騎士にだったらなれる。あるいは従者に。  不意に階段から落ちる直前のことを思い出した。私は新しい呪文を試して失敗した。自分が宙に浮けたら重量のリミッターが外せると思いついたのだ。けど多分そのときはイメージ不足だった。  今度は失敗しない。あなたがいてくれたら、私は空ぐらい軽く飛んでみせるよ。
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