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食堂に移動して四人で朝食を取っていたら、ダリアはお兄さんに連れ去られた。会場準備を手伝わされるらしい。
セレモニーホールには学生ではない侍女さんは入れない。
結果私はロージィ様と二人でホールに赴くことになった。
会場に足を踏み入れた途端、貴族の子女に囲まれた。公爵令嬢のいわゆる取り巻き連中だ。
意地悪そうな顔をしていると思ったら、いろいろ意地悪を言ってきた。
ロージィ様がスピーチを代わってくださると言ったのに拒否するなんて生意気だ。皇太子殿下におべっか使って取り入ろうなんて身の程知らずだ。
髪の色が下品だ。目の色も下品だ。エーデルワイスなんて名前負けだ。臭いし汚い。ホールの空気が悪くなる。
貴族ってもっと陰険にイヤミとかで攻撃してくるものかと思っていたけど案外直接的だ。小学生の喧嘩みたい。痛くもかゆくもない。
私が平気でいたのに反してロージィ様は最初から困り顔で、どうたしなめようか考えているみたいだった。けれども取り巻きの人たちはそんな彼女の様子に全く気づくことなく悪口をエスカレートさせ始める。
ロージィ様は口を開きかけた。
多分「あなたたち、いいかげんになさいませ」とかなんとか言おうとしたのだと思う。
けれどもロージィ様が口を開く前に、王太子殿下がさっと現れてこう言ったのだ。
「君たちは一体何をしている? 寄ってたかって弱い者いじめか?」
取り巻き連中はそそくさと散っていった。ロージィ様と私の二人だけを殿下の前に残して。
殿下は私の傍に歩み寄ると、ロージィ様を睨みつけた。
「ローズマリー・デュフェール。君は恥ずかしくないのか。力を持たない一般生徒をいたぶるような真似をして」
「わたくし、そんなつもりじゃ……」
「ならどういうつもりなんだ?」
とがめる口調で詰め寄られたロージィ様は、言葉を詰まらせ黙り込む。
黙っていられなくなった私は、殿下に抗議した。
ロージィ様は優しい方です。悪口などおっしゃってません。どうして他の人が言ったことで責任を追及されて責められなければいけないんですか?
頭の中で不敬という言葉が泳いでいたけど、可愛くて不憫なロージィ様のためだ。
けれども私の頑張りは徒労に終わる。
「ああ、君はなんて優しい子なんだろう。自分を苛めた相手をそんなに一生懸命かばうなんて」
さらに私は状況を説明したが、言えば言うほど王太子の私に対する好感度だけが無駄に爆上がりしていき、ロージィ様へのフォローの言葉は何一つ相手に響かなかった。
それでもまだそのときは、たまたま運が悪かっただけだと思っていたのだ。そんな妙なことはそうそう起こるものじゃないって考えてた。
けど甘かった。
その後もロージィ様はことごとく間が悪かった。
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