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消沈
「なんで……」
私は立ちつくす。
放たれた魔法は、また消えた。
何百回目かの確認をする。
魔法が成功する三つの秘訣。
魔法使いの血と、精霊の力、それに想い。
魔法使いの血は、この身に流れている。
精霊の力も借りている。途切れる前の青白い光がその証。
想い。これが一番強い。
全部そろっているはずなのに。
「もう時間がないのに」
つぶやくそばから、また涙がこみあげる。
だめだ、泣いちゃ。そんな力があるなら、もう一回。
次で成功するかもしれないんだから。
「雨よ降れ!」
でも、やっぱりダメで。
私は何度も雨の魔法を連発する。
私にはオルガみたいな才能はない。
成績は良くも悪くもなく、リエルほどしっかりしてないし、おっちょこちょいだ。
先生は焦っているから上手くいかないって言ったけど。焦らずにはいられない。
連発した雨の魔法は、どれもこれも消えていく。
やけになって最上級、水の竜の呪文まで唱えた。もちろん竜は出てこない。
「はぁっ、はぁっ」
肩で息をする。全身の疲労感が魔力切れだと警告してる。
私はその場にしゃがみこんだ。
約束したのに。
オルガ、私は友達にふさわしくなかった。
ごめんね。
いつかみたいに、あたりは暗くなっていて。
「姉さん、帰ろう」とリエルが迎えに来た。
次の日、「ついに灼熱の魔王に勝ったらしいぞ、勇者一行も無事らしい」とお父さんから聞いた。
私は、喜べなかった。
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