36人が本棚に入れています
本棚に追加
凱旋
しばらくは雨の魔法なんて唱えたくもなかった。
私にはできることと、できないことがあって、やりたかったことは、できないことだった。しょうがないんだ。私は間に合わなかった。
オルガに合わせる顔がない。
街は、魔王が倒されたと聞いてにわかに騒がしく、明るくなってきた。
そしてついに、その日はやってきた。
「ルルリカ―、起きてきなさい!
オルガちゃんの凱旋パレード始まるわよ!」
「具合悪いもん!」
「具合悪い人はそんな元気に怒鳴ったりしません!」
言い合っていたけど、やがてお母さんは諦めたのか「ごはん置いてあるからね!」と最後に言って、階下は静かになった。
私は自分の部屋で立ち尽くしていた。
起きていたし着替えもした。
だけど、オルガに会いたくない。
その時。
コンコン、と窓が叩かれた。カーテンを開けると、バルコニーにいたのはリエルだった。
「どうしたの?」
「姉さん、一緒にパレード見に行かない?」
「でも……」
「空からなら、オルガさんには気づかれないんじゃないかな」
リエルは屋根の上を指さし、私は仰ぎ見る。
まるで止まり木で休息する鳥のように――屋根の上にドラゴンがいた。
最初のコメントを投稿しよう!