凱旋

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凱旋

 しばらくは雨の魔法なんて唱えたくもなかった。  私にはできることと、できないことがあって、やりたかったことは、できないことだった。しょうがないんだ。私は間に合わなかった。  オルガに合わせる顔がない。  街は、魔王が倒されたと聞いてにわかに騒がしく、明るくなってきた。  そしてついに、その日はやってきた。  「ルルリカ―、起きてきなさい!  オルガちゃんの凱旋パレード始まるわよ!」 「具合悪いもん!」 「具合悪い人はそんな元気に怒鳴ったりしません!」  言い合っていたけど、やがてお母さんは諦めたのか「ごはん置いてあるからね!」と最後に言って、階下は静かになった。  私は自分の部屋で立ち尽くしていた。  起きていたし着替えもした。  だけど、オルガに会いたくない。  その時。  コンコン、と窓が叩かれた。カーテンを開けると、バルコニーにいたのはリエルだった。 「どうしたの?」 「姉さん、一緒にパレード見に行かない?」 「でも……」 「空からなら、オルガさんには気づかれないんじゃないかな」  リエルは屋根の上を指さし、私は仰ぎ見る。  まるで止まり木で休息する鳥のように――屋根の上にドラゴンがいた。
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