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街はお祭り騒ぎだった。
鳴り響く音楽、紙吹雪、光る花火魔法。そして。
「すごい人……」
国中の人が集まってきたみたい。人混みがすごい。
「皆、あちこちから勇者たちを見ようと集まってきたんだよ」
勇者はすぐにわかった。一番前の馬に乗る青年。
彼が通ると、一際歓声が大きくなる。大きな剣を背負った彼は、誇らしげに微笑む。胸がきゅっと痛む。
あの人は、オルガと一緒に旅して戦ったんだ。
その後ろに、格闘家、竜騎士、弓使い、そして、魔法使いが二人。
一人はすぐオルガだとわかった。少し背が伸びた黒髪の魔法使いは、大きな杖を両手で握り、こんな場だというのにおどおどしている。
「どうする、姉さん。声かける?」
私はしばらく考えて、首を振った。
「ううん、帰る。ありがとうリエル」
そうして、歓迎する街をよそに私達は家へ戻った。頼れる友達でいたかったのに。楽しいだけじゃなくて、大変な時も支えられる友達に。
こんなに差が広がるなんて。
ベッドに腰かける。約束を守れていれば、どんなに良かっただろう。
「あーあ」とつぶやいた時、階段を上ってくる音がした。
「ルルリカ、ルルリカったら!」
お母さんの声。何を慌てているんだろう。
「大変よ!」
ノックがうるさくて、私はドアを開ける。
「なに? オルガには私、会いたくない……」
「ルルリカ、国王様がお呼びよ!」
こくおうさま。
私の思考は一瞬、凍りついた。
「……え?」
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