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「え、だって私失敗ばかりして……」
「失敗? ううん、ちゃんと届いてたわ」
そうしてオルガは話してくれた。
旅の途中、そして最終決戦まで、私の魔法が援護してくれたことを。
「ピンチになるとルルリカの雨の魔法が助けてくれたの。覚えがないなら、きっと無意識に転送魔法を使ってたのね。あんな長距離、相当な想いの強さがないとできないのに……すごいわ!
敵には脅威の雨だったけど、触れると思いが伝わってきた。
『オルガ、頑張って。無事でいて。私も追いつくから』――ルルリカの声だった。とても嬉しかったわ」
最後には水の竜が出たのよ、とオルガは笑った。
私は自分の両手を見つめる。
途切れた魔法は、消えていなかった。
届いていたんだ。
話が受け止めきれない。消えたと思っていた魔法が、オルガを助けていたなんて。実感はないけど、とても嬉しくて。
「無駄じゃなかったんだ」と思うと、涙がこみ上げてきた。
最後に勇者が勲章を授与され、人々が道を開ける。バルコニーに出て群衆に手を振るように言われ、固まる私の手をオルガがとって――私が泣いてるのに気づく。
「ルルリカ、どうしたの? どこか痛い?」
おろおろしながら、オルガはハンカチを取り出した。「ありがとう」と受けとる。柄に見覚えがあった。
「これって……」
「ルルリカがくれたハンカチ。これのおかげで私、ずっと頑張れたの。握りしめて眠った夜もあったし、仲間の傷を縛ったときもあった……助かったわ」
「でも、あの……約束守れなくてごめんね、追いつくっていったのに」
「いいのよ。
それよりこれから、ずっと一緒だよ。そのために私、頑張ってきたんだから」
「オルガ……」
私はボロボロと泣いていた。
まるで別れた時と逆だ。
涙をぬぐって、バルコニーに出る。
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