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「そっかぁ……」
お母さんとリエルは見るからにがっかりした後、「大丈夫、姉さんなら次はうまくいくよ」「そうよ、ルルは頑張り屋さんだもの。今日はあなたの好きなにんじんのスープにしましょうね」と口々に慰めてくれる。
そのうちお父さんも帰ってきて、私は大丈夫なふりをして、ごはんを食べてお風呂に入った。自分の部屋で、ベッドに倒れ込む。
「うまくいくと思ったんだけどな……」
おなかはいっぱい、体もぽかぽか。
でも失敗した事実は消えない。ため息が出る。
「あーあ……」
ふと、頭に親友の顔がよぎる。
親友のオルガは、天才だ。普段はおどおどしているのに魔法への理解と集中力が凄まじく、あっという間に三学年飛び級した。王様の命令で勇者一行と魔王を倒す旅に出て、順調に進んでいるらしい。
別れるときに寂しがったのはオルガの方だった。身寄りのない彼女は、私によくくっついていたから。
「光栄なことだし、苦しんでいる人達を助けたい。でも、ルルリカがいないところに行くなんて……」
大きな目に涙がたまって、こぼれそうになる前に私はハンカチを差し出したっけ。
「これ、あげる。私だと思って。
私もたくさん魔法を覚えて、追いかけるね!」
「ほんと?」
「うん、約束」
すると途端にぱぁっ、と表情が明るくなった。
「ルルリカ、きっとよ!
私、待ってるから」
その笑顔がずっと、頭に焼きついている。
約束して、出発を見送ったのに。
飛び級どころか試験にも落ちるなんて。
――これじゃ、オルガを追いかけるどころじゃないや。足手まといになっちゃう。
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