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練習
「ルルリカ―、まだ帰らないの?」
「ごめん、もっと練習してから。またね」
「わかったー。帰り気をつけてね」
友達の誘いを断って、私はまた杖を構える。
頭の中に浮かべるのは、いつだってオルガの笑顔。
入学式で「隣の席に綺麗な黒髪の女の子がいるなぁ」と思ったらオルガだった。オルガも私のくせっ毛を「かわいい」って褒めてくれたっけ。
雨上がりの日、大きな水たまりを見つけてのぞきこんでいたら、水に映る自分の横にオルガがひょこっと現れて、二人で顔を見合わせて笑ったことを覚えている。
そうだ、あの日の水たまりくらいなら、できないかな。
「雨よ降れ!!」
魔力はきちんと放出された。けれど。
「……はぁ」
そこから先がぷつっ、と途切れる。
目の前の校庭は渇いたまんま。やんなっちゃうな、もう。
これが全部、オルガに届いていたらいいのに。
「姉さん、日が暮れるよー!」
ドラゴンに乗って、リエルが空から迎えにきた。
私は杖をポシェットにしまう。
今日の練習は、ここまで。
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