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思い出
陽が沈んで、またのぼって。
ついに最後の戦いに向けて一行は進みだした。
私は極端な練習はしなくなったけど、雨の魔法に挑戦し続けていた。オルガが頑張っていると思うと、ここでやめるのはオルガの友達にふさわしくない、と思った。
「ルルリカ、最近帰り早くなったね」とお母さんは嬉しそうだ。
「雨の魔法、きっと相性が悪かっただけよ。他の魔法は上手じゃない、ね?」
「……うん」
私は杖の手入れに一生懸命なふりをした。
視界のすみで、お母さんが肩をすくめた。リエルもちらちらと私を気にしている。
居心地が良いようで悪い。自分の部屋に引き上げようかなと考えた時。
突然ぱっ、とお父さんが本から顔を上げた。
「ルルリカ!」
「なに?」
「水の魔法なら、あの時のことを思い出せばうまく行くんじゃないか?」
「あの時?」
お母さんもリエルも、興味をひかれたようで近寄ってきた。
「ほら、前にオルガちゃんの訓練を見に行ったことがあるじゃないか。
大きな滝に」
お父さんが身振り手振りで「ほらほら」と言う。
ドオオ、という激しい水音が、私の頭によみがえってきた。
「あら、お母さんもそれなら覚えがあるわ。前の日にリエルが『怖い夢を見た』って何回も起こされて……むぐっ」
続きを言う前にママの口をリエルが慌ててふさぐ。
「余計な情報はいらないよ! ……姉さん、覚えてる?」
「ええと……あの夜は一度リエルがママと間違えて私のことを『ママ、トイレついてきて』って起こしてきて」
「そうじゃなくて次の日のこと!」
リエルはふくれて、それで私は思い出した。
「もしかして……レヴァークの滝のこと?」
パパとママとリエルは顔を見合わせ「そう! そこ!」と同時に言った。
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