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水の竜
レヴァークの滝。
国の北にある巨大な滝は、絶えず激しい音ではるか高みから落ち続けている。岸に立つオルガのローブが風になびく。
勇者一行と旅に出る前日、「レヴァークの滝で最後の訓練をしたい」とオルガが言い出して、お父さんとリエルがドラゴンに乗せて滝まで連れてってくれた。
「天より集いし聖なるうねりよ、大いなる流れを我の手に預けたもう!」
滝の音に負けない大きな声が響く。
オルガは杖を掲げ持つ。魔法というより、神聖な儀式のようだった。
やがて、波打つ水面が、徐々に持ち上がってくる。水の突起はどんどん大きく、伸びていく。
「水の竜!」
ドン! と音がして水飛沫が顔にかかった。
広い空に、水で形づくられた竜が現れた。
うねり、とぐろを巻いて水の竜は空中に舞う。
「すごい、すごいよオルガ!
これならきっと、どんな敵にも勝てるよ!」
はしゃぐ私の声に、オルガは振り返って、嬉しそうに笑った。
私は目を開いた。
目の前には放課後、人気のない校庭。
いよいよ最終決戦も大詰めと聞いて、最後にもう一回頑張ろうと決めた。
お父さんの言葉が、私が見た最高の魔法を思い起こさせてくれた。
あの時の、水の精霊たちの息吹。姿は見えなくても、オルガの魔力に呼応しているのがわかった。きらきらと杖から出る青白い光の色も、水のにおいも、湿った空気の感じも、私は覚えてる。
やれる!
「雨よ降れ!!」
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