36人が本棚に入れています
本棚に追加
挑戦
頑張って、あの子に追いつかなくちゃ。
校庭の真ん中、私は集中する。友達と先生の注目を感じる。誰かの喉がごくり、と鳴った。
すぅ、と息を吸い込み、目を開く。
イメージは完璧。体を流れる魔力も感じる。
いける!
「水の精霊よ――我が杖へ。
力を貸し給え」
杖が青白い光をまとい、水の精霊の力が宿る。
「雨よ降れ!!」
詠唱とともに、私は杖を振り下ろした。
それから数時間後。私は家のドアを開けた。
「おかえりルル!」
「おかえり、姉さん!」
お母さんと弟のリエルがドタバタしながら集まってきた。二人とも期待に満ちた顔で、「試験、どうだった?」と口々に聞いてくる。
言いづらいなぁ。
私は頭をかきながら報告した。
「あー、実は、またダメだったんだよね……」
今日の再試験、私が放った青白い光は、雨を降らせることなく空中で消失した。
「ルルリカ=グレンフィルド、雨の魔法、再試験不合格」
先生の無情な声が、頭に残っている。
最初のコメントを投稿しよう!