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采鈴は景春と共に殿の面前に座り、お園の方が入り口近くに座った。
殿も他の者と同様に采鈴の緋色の髪をじろじろと眺めた。
「父上、この者が緋色の姫です」
「ほぉ、まことに緋色の髪をしているとは。伝説通りであるな」
殿の手が采鈴の髪に伸びてくる。咄嗟に采鈴が体をすくめると、見かねた景春が殿の手を払った。
「父上、おやめください。怖がっているでしょう」
「はは。すまんな。大事な姫君だ。決して他国の者に奪われるではないぞ」
「わかっております」
そのとき、「殿」とお園の方が声を上げた。
「緋色の姫君の世話についてですが、このお園に任せていただけないでしょうか」
「わしは構わんが。景春はそれでいいか?」
景春は采鈴の不安気な顔を見て、静かに首を横に振った。
「母上、大変ありがたい申し出ですが、緋色の姫君については全て私に任せてください。私に付いている侍女もおりますのでこの者の世話については問題ないかと思います」
「しかし、景春…‥」
「園。もうよかろう」
殿はお園の方を遮った。お園の方は一瞬不服そうな顔をしたが、それ以上何も言わなかった。
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