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とてもきれいな娘だった。透き通るような白い肌にほんのり紅がさし、一つに結ばれた黒髪がさらに白さを際立たせる。さらに質の良い山吹色の着物を着ており、良家の娘であることがうかがえる。
娘は背中を伸ばして深々の頭を下げた。
「私は桐と申します。緋色の姫様のお世話係になりましたので、これからはなんでも私におっしゃってください」
「ええっと。桐殿よろしくお願いします」
采鈴も慌てて頭を下げると、桐は堪えきれずに吹き出した。
「私はただの侍女です。緋色の姫様は『わかった』と申されて、どーんと構えていればいいんですよ」
「で、でも、私は姫と呼ばれるような身分ではありませんし、姫と呼ばれるのにも抵抗があります」
「では、どうお呼びすれば良いですか?」
「私は采鈴といいます。どうか様などとつけないでください」
「わかりました。しかし、貴女様の過去の処遇は私の知らないところですのでここに来られた以上、采鈴様と呼ばせていただきます。これだけは譲れません」
桐は滑らかに答えた。
采鈴は桐の歯に衣着せぬ物言いに少々面を食らったが、裏表のなさそうな桐に好感を持った。
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