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意識を取り戻した采鈴の前に青ざめた表情の景春がいた。采鈴は自分の置かれた状況が分からず、理由を聞こうと景春に歩み寄ったとき、武蔵丸が現れて采鈴の両目を白い布で隠し、そして両腕を後ろに縛り上げた。
采鈴は悲鳴を上げたが、武蔵丸は手を緩めず采鈴を床に叩きつけた。
「若君に害を加えるのであるなら、緋色の姫君であろうと私は許しません」
「私が景春様に何をしたって言うのです?」
「とぼけるおつもりか!」
「本当に分からないのです。信じてください」
武蔵丸は采鈴の目を覆っていた白色の布を外す。さっきまで緋色に染まっていた采鈴の目は黒色に戻っていた。
「武蔵丸、采鈴の縄を解いてやれ」
「しかし若君」
「解いてやれと言っているだろう」
痺れを切らした景春は腰に携えていた短刀で縄を切り、采鈴を抱きしめた。采鈴は震えていた。
「そなたの中で何が起こっていたかわしに話してくれるか」
「景春様に言われた蛇目の力のことを考えようとしたことまでは覚えています。気づいたら景春様のお顔が目の前にありました」
「……それで、蛇目の力のことは何か思い出したか?」
采鈴は自分の目元に触れた。
「はい。すべて」
それを聞いた景春は勝ち誇ったように大きく笑った。
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