二 伝説の姫

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二 伝説の姫

 一晩中馬に乗って走り続けた景春一行は、美しい湖畔で休憩を取ることにした。景春と共に馬に揺られ続けた采鈴は馬から降りた途端に緊張が解け、一気に疲れが押し寄せてきたのだった。喉を潤そうとふらつく体を支えながら湖に近づくと、緋色の髪の女が水面に映っていることに気づいた。  采鈴が顔を触ると水面の緋色の髪の女も同じように顔を触る。采鈴が水面に手を近づけると緋色の髪の女も同じように水面に手を伸ばした。 「髪色が変わっている。どうして」  采鈴は昨晩の記憶が曖昧だった。珠が采鈴の行く手を邪魔しようとしたところまでは覚えているが、肝心のどうやって切り抜けたのかがさっぱり思い出せなかった。  風に吹かれて緋色の髪が采鈴の腕に絡みつき、その光景はまるで腕から大量に出血しているかのようだった。  気を失った采鈴はお辞儀をするように上半身から湖に突っ伏していき沈んでいく。間一髪のところで近くにいた武蔵丸が采鈴を引き上げた。
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