verre-2 我が侭な覚悟

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「私個人の考えは関係ないのよ。私や陛下が個人的に認めようが認めまいが、それは関係のないことだから。結論を出すのはシャルロットの両親ではなく、この国の王と王妃なのよ」 「そうですね、野暮な質問でした。失礼しました」  王妃に一礼をして、ジョルジュはその場を去ろうとする。離れたところで控えていた使用人達が姿を現し、ジョルジュの後に続いた。 「王妃は困っているわ。王女は婚約を破棄して、我が侭ばかり言って」  でもねと言って一旦言葉を切った王妃のことを、ジョルジュは振り返る。  窓辺に立つ王妃は困っているようには見えなかった。少し誇らしげな、安心したような、喜んでいるような、そんな顔だ。 「でも、母は嬉しいわ。あんなに小さかった娘が己の意思で何かを成し遂げようとして頑張っているのだから」  そして、王妃は立ち止まっているジョルジュのことを追い越して廊下の向こうへ行ってしまった。残されたジョルジュはもう一度窓に歩み寄って外を見る。  馬車の後ろ姿が見えなくなるまで見送ったシャルロットが、くるりと向きを変えたところだった。上から見ているジョルジュに気が付くことはない。 「僕も頑張らないとな……。シャルロットはすごいや」  そう言って、窓から離れる。付き従う使用人達を引き連れながら、ジョルジュはゆっくりと廊下を歩き出した。
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