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シャルロットは軽く身を屈めて令嬢と目を合わせる。
「えぇ、もちろんよ。今日はわたくしが頑張って作ったお菓子もあるから、楽しんで行ってね」
「わーい、お菓子!」
『お時間が合えばご家族もご一緒に』と招待状を出したので夫人や子供達の姿もちらほらとある。小さな令嬢や小さな令息達はお菓子の話を聞いて歓声を上げた。
斯くして、王女主催のお茶会は幕を開けた。大人達が難しい話や面白い話をしている足元を小さな子供達がお茶菓子を手にうろうろしている。
「思い出すわね、初めて会った時のこと」
「あの日もこんなお茶会の日でしたね。……ふふっ。驚きましたよ、あんなところからいきなり出て来て私のタルトを奪おうとして」
「わ、若気の至りってやつよ。今はあんなはしたないことしないわ! もう、しみじみしてたのに……」
「ふふ、かわいらしかったですよ」
シャルロットは膨れながら会場を見回した。近付いて来る人物に気が付き、すまし顔を取り繕う。
「シャルロット殿下、本日はお招きいただきありがとうございました」
「わたし達までお招きいただいて」
数人の令息と令嬢。歳はリオンやシャルロットと同じくらい。
「あら、そちらの方は?」
「あまり見ない顔だな。学園にいたっけ? それとも卒業生かな」
「こちらはリオン・ヴェルレーヌ様よ。今回の準備を手伝ってくださったの」
シャルロットに紹介され、リオンはモーントル学園の少年少女達に挨拶をする。
真面目そうな令息も、気の強そうな令嬢も、皆揃って不思議そうにリオンを見遣る。ヴェルレーヌ家が不安定な状態であることを知っている者は「どうしてあんな家の人が」と不審そうに、リオンのことを今ここで知った者は「知らない人だなぁ」と興味深そうに。じろじろと見るのは失礼だと分かりつつも、子供の好奇心は意識して抑え込めるものではない。
リオンは余所行きの笑顔を浮かべたまま半歩後退る。足元から聞こえた音に気が付いたシャルロットが、ぽんと手を叩いた。皆の意識と視線がシャルロットに向けられる。
「わたくしもお菓子を作ったって先程言ったわよね。そろそろ持って来させるから、皆様の感想を聞かせてもらいたいわ」
適当なテーブルで待っていてねというシャルロットの言葉で、集まっていた令息と令嬢達は少しずつ散って行った。
「シャルロット様」
「囲まれるの好きじゃなさそうだったから。あまりないんでしょう、同年代と接すること」
「ありがとうございます……」
シャルロットは近くにいた使用人にお菓子を持って来るように言った。ほどなくして、客人達が囲むテーブルの上に華やかなケーキが姿を現した。
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