Verre-5 灰かぶりと王女

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 城下町でのパレード、大広間での式典、バルコニーからの王室のお出まし。建国記念日の催し物はスケジュール通りに滞りなく進んで行く。お披露目会も終わり、ここで帰る者も少なくない。残った者達は後程開かれるパーティーに参加するため、各々用意された控室へ入って行った。  シャルロットに手を握られてそのまま待たされていたリオンは、他に誰もいなくなったところで一段高いところにいる国王を見上げた。 「陛下……」 「シャルロットのことをよろしく頼むよ、サンドリヨン子爵。家の立て直しに奮闘してくれたまえ。ヴェルレーヌ家がかつての輝きを取り戻した暁には、君を正式な婚約者として改めて皆に発表しようね」 「あの……。サンドリヨン……子爵……って」  困惑し動揺しているリオンの前で、王妃が一通の封筒を取り出した。見覚えのありすぎる紋章で封蝋が押されており、中からは常日頃見ている筆致で書かれた書状が出て来た。  それは、とリオンは呟く。王妃が手にしているのは、以前子爵がリオンに見せた国王宛ての書状を書き直したものだった。 「先日、貴方のところの鳩さんが届けてくれたのよ。サンドール子爵に頼まれたみたいね」 「父が」  王妃から書状を受け取り、国王が改めて目を通す。 「サンドール子爵の体調はあまり優れないようだね」 「体は、体はどこも悪くないと医者は言っています。ですが……」 「レヴオルロージュでは通常生前の爵位継承は行えない。しかし、子爵の現状を思うと負担はできる限り減らしてやりたいのだよ。今は君を子爵代理として方々に向かわせているようだが、それでも子爵本人が最終的には動かざるを得ないことも少なくないだろう」 「はい……」 「そこで、リオン君。特例として、君にサンドリヨン子爵の名を与えることにした。あくまで呼称であって公式的な爵位の称号ではないけれどね」  控えていた国王の側近が書状をリオンの元へ持って来る。  受け取って目を落とすと、力のない筆致で子爵の書いた字が紙の上を這っていた。書かれていることは以前リオンが見たものとほとんど同じである。子爵は隠居して、リオンにほとんどのことを任せたい。爵位を譲ってしまうくらいの覚悟である。どうか特別に認めていただきたい、と。そして、レヴェイユは小さな村だが、街道に接している拠点でもある。村人達は子爵を慕っているが、今のままでは不安に思う者も出て来るだろう。リオンを据えた方が村人や商人達も安心できるのではないか、けれどリオン自身はそれで大丈夫なのだろうか、という子爵の苦悩が記されていた。  書状は側近を通して再び国王の元へ届けられる。
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