Verre-3 王女と婚約者

6/6

40人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
「いいんですよ。僕は貴女と良き友人でいられるだけでとても嬉しいんですから。もやもやがなくなって、より仲良くなれる気さえします」 「ありがとう、ドミニク様。わたくしの大切なお友達」  一週間後、シャルロットは大事な発表があると国王に呼ばれた。玉座の間で国王と王妃と並んで座って、身構えている貴族や大臣や王宮付きの新聞記者のことを眺める。オール侯爵と一緒にドミニクも来ているようだ。  国王はわざとらしく咳ばらいをしてから、集まった人々を見回した。 「諸君、よく集まってくれた」  シャルロットは連れて来た王女付きの侍女が自分のすぐ傍に控えているのを確認する。侍女は王女と目が合い微笑む。彼女は自分が何を任されているのか分かっていない。ただ、シャルロットに言われた通りにしているだけだ。「この包みを持って控えていなさい」と。  国王はちらりとシャルロットを見てから、人々の方を向く。そしてシャルロットとドミニクの結婚式を年内に行う予定であると宣言した。玉座の間は拍手と歓声に包まれる。  挨拶をするよう王妃に促されたシャルロットは、侍女に包みを渡すように言ってから前に出た。同じようにオール侯爵から背中を押されてドミニクも前に出る。ドミニクはシャルロットと目が合うと小さく頷いた。これからこの場で何が起ころうと、彼にはもう覚悟ができている。シャルロットは頷き返し、侍女から受け取った包みを開いた。  玉座の間にガラスの靴が姿を現す。  居合わせた人々はシャルロットとドミニク以外全員が驚いて声を上げた。舞踏会のことを覚えている者は「あの時のものだ」と、覚えていない者や知らない者は「なんて綺麗なものなんだ」と。 「わたくし、シャルロット・サブリエはドミニク・ジャンドロン様との婚約を破棄いたします」  どよめきを打ち消すように、シャルロットはガラスの靴を高々と掲げる。 「わたくしは、このガラスの靴がぴったり合う方と結婚いたします!」
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加