Verre-4 混乱、歓喜

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 ガラスの靴が見付かった。持っているのはシャルロット。彼女は持ち主を待っている。その事実を嚙みしめると、自然と口角が上がった。  幼かった夏の日、小さな小さな金色の女の子に心を奪われた。あの笑顔を思い出すと、継母と義姉達に酷いことをされて落ち込んだ時にも少しばかり元気を取り戻すことができた。舞踏会で再会して、今でも変わらず彼女が自分の心を激しく揺さぶる存在であることが分かった。  リオンは階段を下りる。今日の足元は底が外れかけているくたびれた靴だが、この足にガラスの靴を取り戻せる日も近い。スキップなど踏んでしまっては靴底を落としてしまいそうなので、はやる気持ちを抑えて一段一段ゆっくり下りる。  歩く動きに合わせて長い髪が揺れた。灰に染まった銀の髪はまるでこれから訪れる幸せを先取りしたかのように、硝子庭園中のガラスからの光を受けて美しく輝いていた。
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