Verre-1 王子の心配事

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「シャルロット様の心配ばかりしていていいんですか? ジョルジュ様」  窓辺で話し合っていた二人の元に、アンブロワーズがやって来た。アンブロワーズは本人が力説している通りヴェルレーヌ家の使用人ではないが、表向きにはリオンの従者として議事堂に出入りし議会に付き添っている。  ジョルジュは真っ白な男を視界に捉え、その白さに驚く。リオンと共にいる姿は時折目にしているものの、近寄られて直接話しかけられることはほとんどない。 「えぇと、君は確か……」 「俺はリオンの素敵な魔法使い、アンブロワーズ・リーデルシュタインです。以後お見知りおきを、殿下」 「そうそう、アンブロワーズ君だったね」 「殿下はご自身の心配はしなくてもいいんですか? 上の妹は既に結婚し、下の妹にも結婚の話が出ているうえに騒動になっているというのに」 「おい、殿下に失礼だろ」  リオンがアンブロワーズを制止すると、ジョルジュはリオンのことを宥めた。 「リオン殿の従者が言う通りだから。私にも婚約者の一人や二人いたけれど、あまり、仲良くなれなくて。そのうち、また父上や母上が素敵な令嬢を連れて来てくださるんだろうな……。未来の王妃様になる女性だから、『この人で間違いない』『国民に認めてもらえる』と私が思える人にいつか出会えるといいのだけれど」 「見付かるといいですね」 「リオン殿は? 良きお相手はいるのかな」 「わっ、私ですか!? 私は、その……」  シャルロットのことが好きで、私こそがガラスの君です。などと言えるはずもなく、リオンはわたわたと手を動かして後退した。リオンを守るようにアンブロワーズがジョルジュとの間に割って入る。 「リオンを困らせたら、たとえ王子でも容赦しませんからね」 「やめてくれアンブロワーズ、不敬だから」 「失礼、触れない方がいい話題だったかな」 「いえ……。我が家は外から女性を呼べる状態ではないので……。もう少し立て直せるといいのですが」 「あぁ……。貴殿も大変だな。私から何かをすることはできないが、良い方向に進んで行くことを祈っているよ」  リオンが「ありがとうございます」と返答しようとして「が」まで声にしたところで王子付きの使用人が数人現れた。ジョルジュはリオンとアンブロワーズにひらりと手を振り、使用人達と共に廊下の向こう側へ消えて行った。  麗しい姿を見送って、アンブロワーズはくるりと体の向きを変える。国中の女性はおろか男性にも憧れられていると言っても過言ではないジョルジュのことを見ていた時よりも、リオンを見ている時の方がアンブロワーズは嬉しそうで楽しそうで幸せそうである。
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