Verre-3 灰だらけのガラス

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継母(はは)義姉(あね)は私のことを好ましく思っていないらしくて、あまりいい扱いをしてくれません……。家事はもちろん、雑用、何から何まで私がやっています。やらされて、います……。私は嫡男ですが、使用人のようなもので……三人は私を灰かぶりと呼んでいます。この格好も……。議会に赴ける程度の服はなんとか用意しましたが、日常的に着ていてはくたびれてしまうので普段はこの格好をしています。新しい服なんて、そんなに買えませんから」  灰かぶりの現状にシャルロットは瞳を震わせた。家が苦労していることは馬車の中で聞いた。リオンの格好も、家が困っているからだと思った。そういえば継母達は華やかなドレスを着ていたなと思い出して、リオンだけがみすぼらしい格好をさせられていたことに気が付く。ヴェルレーヌ邸の前ではリオンとガラスの靴ばかりに意識が向いてしまっていた。  ジョルジュは議事堂で会うリオンの姿を見て、ヴェルレーヌ家がある程度立て直されたのだと思っていた。普段の装いが着古したものだなんて想像できるわけがない。 「リオン殿、平気……なのか。今の母上達を家から出そうとすればできるだろう」 「昔と比べれば随分と柔らかくなったものですよ、彼女達は。平気だと言えば嘘になるかもしれませんが、私ももう慣れてしまいましたし、それに……。あれでも、家族ですから。どうにかしてやろうと思っているのなら、とっくに彼にやらせています」  彼? とジョルジュとシャルロットは首を傾げた。丁度そのタイミングでドアがノックされる。 「シャルロット様、お客様がお見えです。ガラスの君の友人だと名乗っていますが……」  侍女の声にシャルロットが答える前にドアが開いた。部屋に入って来たのは真っ白なローブを纏い真っ白な翼を持つドミノの男である。 「リオン! 舞踏会の時の衣装を持って来ましたよ! 貴方の素敵な魔法使いが馳せ参じました!」 「アンブロワーズ、ありがとう」 「シトルイユは優しそうな馬係の方に任せて来ましたよ」  アンブロワーズは抱えていた袋から衣装を出し、リオンに渡す。 「これを着て身だしなみを整えれば、皆が貴方こそがガラスの君だと分かるでしょう」  そして、壊れやすいガラス細工を触るようにリオンの手を恭しく取った。片膝を着き手を優しく包むしぐさは、まるで物語の中の騎士である。  シャルロットはソファから立ち上がり、テーブルの横を通ってアンブロワーズの隣に立った。片膝を着いている彼に目線を合わせるように、屈む。ふわふわのドレスが広がった。
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