Verre-4 王女様のお相手

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 少し気を抜けば継母に押し負けそうだった。リオンは頑張って怖い顔を作る。 「夕食の時に父上も加えて改めて話をしますから」 「わ、分かったわ」  かつて見下ろしていたリオンに見下ろされながら、継母は居心地が悪そうに眼を逸らした。  食卓を囲むヴェルレーヌ家の面々は皆深刻そうな顔をしていた。フォークを置いて、リオンは居住まいを正す。 「父上、お話があるのですが」  昼間自分が家にいなかったのは、王宮へ連れて行かれていたから。国中で噂になっているガラスの君の正体は自分である。シャルロット王女はガラスの君と結婚するつもりだ。概要を掻い摘んで、大事なことを抜かさないように、リオンは子爵に話をした。  子爵はリオンを見る。今はもうすっかり元気がなくなってしまっているが、色は鮮やかさを失わず、リオンと同じ美しい青い瞳である。父と子の同じ色の瞳が、料理の上でぶつかる。 「昔、別荘で女の子に会って仲良くなったと言っていたな。まさかそれが王女だったとは」 「舞踏会で姿を間近で見て、王女があの時の少女だと確信しました」 「まるで運命のようだな」  子爵はスープを啜る。 「庶民ならば気にすることでもないのですが、私はサンドール子爵家の者であり、彼女はこの国の王女です。陛下は父上と直接お話になりたいと仰っていましたが、難しいことだと思ったのでこうして私が報告を」 「ふむ……」  継母は子爵がいる前ではリオンにきつく当たらない。もう仲良くなった体を装っているため、先程のようなことを大声で言うことはない。クロエは継母の様子を窺い、ナタリーは子爵の様子を窺っていた。  子爵がスプーンを置く。 「オマエは王女を愛しているのか?」 「あいっ、あ……愛してる……と、おも、思います……」  やや赤くなりながら動揺するリオンを見て、子爵は小さく笑った。 「ですが、まだ心構えというか、心の準備というか……。それに、久し振りに会ったばかりで……。気持ちは……彼女への気持ちは変わっていませんし、より強くなっているとさえ思うんです。ですが……。こう、なんというか。もう少し、こう……交流? とか? 親交をより深めたいなとも思うんですよね」 「そうか。私はオマエの気持ちを尊重するよ。庶民であろうと、王家の人間であろうと、オマエが大切に思って共にいたいという相手のことを私は歓迎する。しかし、最終的に決めるのは陛下だ。この国の王が駄目だと言えば、私にそれを覆させる力はない」
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