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「君が同行していれば侯爵も安心だろう。もちろん学業優先だ。休日にタイミングが合えばお願いするよ」
「陛下からの命を受けられるなんて、光栄です……。頑張ります……!」
「君のことは随分と振り回してしまったな。もう少しだけ辛抱してくれ」
王女の婚約者として舞踏会で発表され、婚約者としての日々を過ごし、結婚式を行うという発表の直後に婚約破棄されたドミニク。六月九日までにガラスの靴が見付からなければリオンは婚約者候補ではなくなるため、婚約者の話はドミニクに舞い戻って来る。
ガラスの靴、早く見付かりますように。そう願うドミニクと、靴なんて見付かるなと願う侯爵。父親は息子のことを視線で鋭く射貫く。
「ふんっ。ドミニク! あの男のことをよく見張っておくんだぞ」
「は、はい……」
「陛下、私はそれで構いませんよ。靴が見付かるといいですな、サンドール子爵代理」
一年半も探して見付からなかったものが一ヶ月程で見付かるわけがない。侯爵は余裕たっぷりに笑った。リオンは苦笑いし、シャルロットは膨れっ面で侯爵を睨む。
話が大方纏まったと見た国王がリオンに下がっていいと伝える。リオンは国王と王妃、ジャンドロン親子に頭を下げてから玉座の間から退室した。
自分の後ろで大きな扉が閉まったことが分かった瞬間、張り詰めていた緊張感が切れてドッと疲れが襲い掛かった。一歩一歩確かめるように数歩進んで、ゆっくりと深呼吸する。国王と王妃に対してとんでもない宣言をしてしまった。情けない顔になってから、追い駆けて来たシャルロットに気が付き表情を引き締める。
「リオン、大丈夫なの。お父様とお母様にあんなこと言って」
「やります。私はやりますよ。それに先に靴を探すと言ったのは貴女です」
「期限を決めていいって言ったのは貴方よ」
リオンはシャルロットから少し目を逸らす。シャルロットはその視線の先に回り込む。
「……やってやります。ガラスの靴、絶対に見付けましょう、シャルロット様」
決意に満ちたきりっとした顔に、シャルロットは目を丸くする。動揺したり焦ったりしていた先程とは違う。無理して強引に貼り付けている顔だが、シャルロットにはそれを知る由はない。
「よし! 頑張りましょ、リオン」
「はい」
にっこりとシャルロットが笑う。答えるようにリオンも微笑んだ。
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