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翌朝、リオンは毛布の中で目を覚ました。ヴォルフガングが朝食の準備をしており、料理の匂いが漂っている。
「よう、坊ちゃん。おはよう」
「おはようございます。……アンブロワーズは?」
「鳩の兄ちゃんなら外だ。日が出て来たから俺が中に入ろうとしたら、外に出て来た。自分が外にいるから俺は少し休んでいいって言ってよ。で、俺は一休みしてから、こうして飯を作ってるってわけ」
フライパンの上では大ぶりのソーセージがごろごろと転がっていた。
「朝食まで……ありがとうございます」
「俺はいつも通りにやってるだけだよ」
リオンは身だしなみを整えてから、仮眠室のドアをノックした。返事はない。もう一度ノックすると、言葉になっていない音が返って来た。シャルロットはまだ半分眠っているようだ。
声をかけて中に入り、後ろ手にドアを閉めてからリオンはシャルロットの様子を窺う。毛布を抱えて丸くなっているシャルロットはシュミーズ姿であり、このうえなく無防備だった。ふわふわした金色の髪が顔を包んでいる。
朝、部屋から出て来ない義姉を呼びに行くことがたまにある。リオンが声をかけると、義姉達は本や鏡から顔を上げた。ドレスの裾を整えろとか、髪を纏めてくれとか、色々な要望をされることもある。呼び付けられることも多々あるため、リオンは女性の部屋を訪問すること自体は躊躇わない。
しかし、相手が肌着姿であれば話は別である。リオンは踵を返し、ドアを開けた。
「シャルロット、おはようございます。朝ですよ。イェーガーさんが朝食の用意をしてくれています」
「んぅー」
「外にいる侍女を呼んで来ますね」
使用人達はいない者として陰に隠れているが、王女様の身支度となれば呼び出さないわけにもいかないだろう。やれコルセットを締めてくれだの、やれパニエを持って来てくれだの義姉達に言われることがあるが、身内と王女様では事情が異なる。使用人達にあることないこと邪推されて騒がれても困るのだ。
リオンが外に出ると、シトルイユが嬉しそうに擦り寄って来た。王宮の白馬はまだうとうとしていたが、人間の接近に気が付いて一瞬で姿勢を正した。
「おはよう、シトルイユ」
愛馬を撫でてから茂みに向かう。葉や枝が少し散らかっているようである。
「王宮の使用人、そこにいるね。シャルロット様の身支度を頼めるかな」
茂みから出て来た侍女数人が小屋に入って行くのを見送り、リオンは周囲を見回す。アンブロワーズの姿が見えない。
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