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(どうしよう…明るくなるのを待った方が良いのかしら?
でも、誰かにこの服を見られたら…)
その不安が律子の足を速めた。
闇雲に進んでいくうち、律子は小さな光りをみつけた。
光りはだんだん自分の方へ近付いて来る…
(……蛍…?)
川のせせらぎも聞こえないのに、どうしてこんな所に蛍が…?
そんな疑問を感じた時、律子の心臓は跳ね返った。
(………麻美…なの?)
蛍は亡くなった人間の魂だという古い言い伝えが不意に律子の脳裏をかすめた。
「死んでもまだ私と純一の仲を邪魔するつもりなのね!」
闇の中で律子は叫び、蛍に向かって両手を振り回した。
しかし、蛍は律子の腕をすり抜け、のんびりとした光りを放ちながら飛び続ける。
「あんたなんて、叩き潰してやる!」
律子の動きはさらに激しいものとなった。
狂ったように手を振り回し蛍を払い除けようとするが、蛍はかきわけられる水のように律子の手から逃れ、ゆるやかな飛行を続けた。
「純一は…絶対にあんたなんかに渡さない!」
一際ヒステリックな声に驚いたかのように蛍の動きが変わり、その速度が増した。
律子はその後を鬼のような形相で追いかける。
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