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「ねぇ、聞いた?」息を切らしてゆっこ。 「何を?」 「三条くん、後輩に告られたんだって」 え。 私は、思わず教室の中に陽太くんの姿を探す。 けれど彼の姿はどこにもなかった。 昼休みだから、別の教室や外へ出ているみたいだ。 「そ、そうなんだ…」 告白されたってことは、きっと返事をしてるよね。 付き合い始めたのかな。 心臓がドンドンと脈を打つ。 知りたい。でも知るのが怖い。 陽太くんはかっこいいし、クールだからモテないはずがない。 私が気づくくらいの魅力だもの、他の人だって魅力に気づいちゃうよね。 その後輩は、陽太くんの隣に座るくらい、近い距離にいたのかな? 陽太くんが告白されたという事実は、私の中で衝撃的で、午後の授業はまるで頭に入ってこなかった。 「教科書のここまでが期末試験の範囲になるからな。おーい、雨宮。聞いてるかぁー?雨宮ー」 名前を呼ばれ、ハッと顔を上げる。 全く聞いていなかった。 名指しで呼ばれた私を、クラスの皆が笑う。 はずかしいより先に、陽太くんが気になって、窓際の前から2番目の席に目を向ける。 陽太くんは、運動場の方を眺めていて、私が笑われていることに気づいていないようだった。 今日はよく晴れていて、カラッとした暑さだ。 雨が降る気配はまるでない。 ゆっこから聞いた、陽太くんが告白されたという話を本人に聞きたい。 返事はどうしたのか――そればかりが気になる。 放課後の掃除にもまるで身が入らなかった。 教室では、あまり陽太くんと話をしない。 最初の頃、話そうとしたら何となく、陽太くんに避けられている気がして、それ以来やめている。 私が陽太くんと話せるのは、雨の日だけだ。 雨が降れば、噂の真偽がわかるのに。
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