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*2*
「ねぇ、聞いた?」息を切らしてゆっこ。
「何を?」
「三条くん、後輩に告られたんだって」
え。
私は、思わず教室の中に陽太くんの姿を探す。
けれど彼の姿はどこにもなかった。
昼休みだから、別の教室や外へ出ているみたいだ。
「そ、そうなんだ…」
告白されたってことは、きっと返事をしてるよね。
付き合い始めたのかな。
心臓がドンドンと脈を打つ。
知りたい。でも知るのが怖い。
陽太くんはかっこいいし、クールだからモテないはずがない。
私が気づくくらいの魅力だもの、他の人だって魅力に気づいちゃうよね。
その後輩は、陽太くんの隣に座るくらい、近い距離にいたのかな?
陽太くんが告白されたという事実は、私の中で衝撃的で、午後の授業はまるで頭に入ってこなかった。
「教科書のここまでが期末試験の範囲になるからな。おーい、雨宮。聞いてるかぁー?雨宮ー」
名前を呼ばれ、ハッと顔を上げる。
全く聞いていなかった。
名指しで呼ばれた私を、クラスの皆が笑う。
はずかしいより先に、陽太くんが気になって、窓際の前から2番目の席に目を向ける。
陽太くんは、運動場の方を眺めていて、私が笑われていることに気づいていないようだった。
今日はよく晴れていて、カラッとした暑さだ。
雨が降る気配はまるでない。
ゆっこから聞いた、陽太くんが告白されたという話を本人に聞きたい。
返事はどうしたのか――そればかりが気になる。
放課後の掃除にもまるで身が入らなかった。
教室では、あまり陽太くんと話をしない。
最初の頃、話そうとしたら何となく、陽太くんに避けられている気がして、それ以来やめている。
私が陽太くんと話せるのは、雨の日だけだ。
雨が降れば、噂の真偽がわかるのに。
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