*3*

1/5
前へ
/11ページ
次へ

*3*

4つ目のあめあめ坊主を処分した日の6限目の最中。 それは突然起きた。 雷が鳴りだしたかと思うと、バケツをひっくり返したみたいな大雨が地面に降り注ぐ。 「きゃあっ」 ピカッと光る稲妻に、クラスの女子が悲鳴を上げた。 蒸し暑い中、雨が降りこまないように窓が閉められ、教室内は一気に温度が上がる。 汗ばむ暑さに、湿度も上がってジメジメとした嫌な暑さが這い上がって来る。 授業に身が入らず、先生が職員室に戻って冷房をつけてくれた。 涼しさはすぐには室内にいきわたらず、皆ノートやルーズリーフで顔を煽ぎながら授業を聞いていた。 授業が終わる頃には、土砂降りの雨は激しさを増していて、運動場には大きな水たまりが数か所できている。 あめあめ坊主がやっと願いを聞いてくれたのかな、と嬉しく思う反面、朝は自転車で来たであろう陽太くんが、バスで帰るのか自信がなく不安にも思った。 掃除を終え、ホームルームが終わった後、自転車で通学してきたクラスメイトは教室で雨宿りをしていた。 バス通学勢も、傘を持っていない人たちは雨が収まるのを待つようで教室にいた。 「三条くんは、雨が止むのを待つらしいよ」 ゆっこはそう言って、私を教室の外に連れ出す。 「待ってても、一緒には帰れないと思うよ」 折り畳み傘を持っているというゆっこに、一緒にバス停まで行こうと誘われ、後ろ髪を引かれる思いで昇降口へ向かった。 せっかく雨は降ったけれど、陽太くんと一緒に帰ると言う願いは叶わなかった。 次は、朝から雨が降るようにお願いしなくちゃ。 そう思いながら、バスで帰宅する。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加