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翌朝、願いは虚しく曇り空だった。
天気予報は晴れだったから、曇りという時点では外れたことになる。
でも、雨は降らなかった。
いつになったら、陽太くんと通学できるんだろう。
そう思いながらバス停へ向かうと、そこには陽太くんの姿があった。
「えっ。今日はバスなの?」
驚いて思わず話しかけると、「昨日バスで帰ったんだ」と陽太くんが少し驚いた表情で答えた。
「そ、そうなんだ」
じゃあ、昨日も待っていたら、一緒に帰れたのかな。
そう思いながら、陽太くんの隣でバスを待つ。
「昨日は雨凄かったもんね」
「うん、自転車を置いて帰って来る羽目になったから参ったよ」
そっか。雨が降ると、バス代かかるもんね。
陽太くんからしたら、雨はいいものじゃないよね。
私は、陽太くんと一緒にバスに乗れるから嬉しいけど。
あめあめ坊主を作ってまで、雨を願った自分が恥ずかしくて、いたたまれなくなった。
「あ、でも――」
陽太くんが言いかけた時、バス停にバスが止まった。
陽太くんは言葉を呑みこんで、それから、バスの乗車口前に立つ。
私もその後ろに並んだ。
とても自然な流れで、陽太くんの後ろに立てた。
陽太くんがバスに乗り、いつもの座席に腰を下ろす。
私も定期券を乗車口でかざした後、バスの後ろ側の通路に足を踏み込み、いつもの席ではなく陽太くんの席の横に立った。
「ねぇ、隣、いい?」
「えっ」
私の質問に、陽太くんは戸惑ったような顔をする。
嫌だったのかな。その反応に、少し傷ついた。
聞かなきゃよかったかな。
いつもみたいに、席を開けて座ればよかった?
「あ、ええと――」
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