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気まずい。 最悪だ。せっかく一緒に通学できるのに。 欲張りすぎたんだ。私のバカ。 自分に嫌気がさす。 回れ右をし、「何でもない」といつもの座席に座ろうとした途端、陽太くんに手首を掴まれた。 「いいよ、ここ座って」 陽太くんに言われたのと同時に、バスが発信する。 私は、少しひじ掛けに寄り掛かるようにして座席の端に腰を下ろした。 普通に座ったら、肩が触れ合ってしまうから。 それは緊張するし、そこまでの距離感じゃないし、陽太くんにもし彼女がいるなら申し訳ない気がして。 「いつもは違う座席に座るのに、今日はどうして?」 「そ、れは――バス停でっ!は、話したりなかったから」 緊張で声が上ずる。 返事のない陽太くんの反応が気になって、隣を見ると、びっくりしたように目を丸くしていた。 せっかく、天気予報が外れて一緒に通学できることになったんだ。 次はいつ雨になるかわからない。 チャンスは、逃せない。 「そっか。うん、俺もそう思ってたから、嬉しい」 「へ?」 陽太くんが、私と同じように思っててくれた? 「だってほら、今日なんかいつもよりバス早かったし」 あ――話したりないって、ホントに言葉通りの意味でか。 一瞬期待してしまった。 「あ、ああああのさ」 「うん?」 やだ、声が震えてすごくどもってしまった。 傍目から見たらきっと私、挙動不審だ。 「告白、されたって聞いたよ。おめでとう?」 本当なの?とか付き合ってるの?とか聞きたかったけど、上手く言葉にできる自信がなかった。 それに、そうやって聞くと、遠回しに告白してるみたいになってしまいそうで。 「ありがと。でも、断ったんだ」 「そうなの?」 少し食い気味に聞き返す。 私が、この話題に興味津々なのバレてないよね?
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