side怜央

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side怜央

 その日もいつもと変わらず、俺を抱いた後に(しゅう)は冷蔵庫からお茶を取り出して飲んでいた。  俺はベッドに寝転んだまま余韻に浸っている。  シャワー浴びに行かなきゃ。  修はどうするんだろう。  一緒に入ったら風呂の中でもやりそうだな。  そんなことをボーっとする頭で考えていたときに、それは突然降ってきた。 「セフレの関係解消したいんだけど」 「――は?」  セフレをやめる?  さっきまでめちゃくちゃやってたけど?  それ今言う? 「――好きな人できた?」  かろうじて捻り出した言葉は、セフレになろうと提案された時に修が言い出した事だった。 「うん、そう」  なるほど、好きな人ができたのか。 「そうか  いい感じなの?」 「うん、まぁ……」  それならセフレなんていないきれいな状態の方がいい。 「わかった」 「意外とあっさり受け入れるんだな」 「だって最初に好きな人ができたら解消するって言ったの修だろう?  受け入れるよ」 「そうか……」  なんだよ、そのちょっと悲しそうな顔。  お前から言い出したくせに。 「じゃあ、帰るわ」 「えっ、帰んの?」 「まぁ、泊まるのもなんか違うし」 「シャワーだけでも浴びていけば?」 「いや、いい  じゃあ」  そう言って、さっさと帰り支度を済ませて、俺のたった今になったセフレ霧島修一(きりしましゅういち)は帰っていった。 「好きな人ね……」  修は恋愛に興味がないと思っていた。  体だけの気軽な関係が好きなんだと思ってたんだけどな……。  恋愛はもういいやって思ってる俺とは違うか。  なんか取り残された気分。 「ハァ――……」  ため息をついてシャワーでも浴びようと立ち上がる。  ゴミ箱の中にある使い終わったゴムやらティッシュが目に入る。  「絶対やる前に言う事だったと思う」  独り言ちて、俺は浴室へ向かった。
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