血走った目

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血走った目

 自分のオッズを知る方法はただ一つ、掲示板を見る事。観客席の向こうに電光掲示板がある、こちらは元ヒト、数字は理解できる。  (お! 単勝1.8倍がいる。ひょっとしてオレ? くそ、やっぱゼッケンを見とけばよかった) さすがにいまここで首をクネクネさせて見ようとすると落ち着きがないと思われて手綱を引っ張られるし、今はやめとこう。 「フー、フー」  あきらめて視線をもどすと荒い鼻息が聞こえる。前を見るとすごい形相の馬が近づいてくる。目は充血して吊り上がり今にも襲い掛かられそう。  (な、なんだ、こいつ、やろうってんのか? 噛みついてくるのか?) 思わず身構えると、血走った馬はそばを通過していった。  (レース前で興奮してるのか、いるよな、スタートして全力で駆け出し、最後バタバタになるやつ) おそらくあいつはそういうタイプかと想像していると、白い服のスターターを乗せた台が上がる。ファンファーレが鳴り響く。  (いよいよか……) やや緊張を感じながら、ゆっくりとゲートに向かう。入ったゲートは外枠だった。  単勝1.8倍は内枠だった、つまりおれは1.8倍ではない、くそ、そうはうまくはいかないか。   ───ガタッ  うつむいて考えている時にゲートが開く。   (あー、出遅れたー)
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