◆2016年(1)(5年前)

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◆2016年(1)(5年前)

5年前、病気がちだった兄が、とうとう死んだ。 なぜか悲しく無かった。 それ以来おかしなことが続けて起こった。 兄が死んだ上に、勤めていた会社が倒産。 これだけのことが起こっているのに、どういうわけか私は悲しくも悔しくもなくて、淡々と兄の遺品の片づけと再就職できる道を探していた。 最初、それは腰痛から始まった。 そして痛みが全身に広がった。 痛みが酷く、体はガチガチになり疲労し外出が困難になった。病院に行って検査をしてもらった。医師は検査の結果を見ながら言った。 「異常はありません。ストレスですかね?  痛み止めと睡眠薬を出しておきます。様子を見ましょう」 普通の痛みではなかった。鎮痛剤が、まったく効かない。 ほかの病院に行ってみたが、みな医師は同じようなことを言った。 いったい何が起きているんだ?  腕と肩関節の酷い痛みで、携帯電話ですら持っていられなくなった。こんな状態でも病院にだけは行かなくてはならない。 外出するとき、ペットボトルを持っていられないので、喉が渇けばトイレの手洗い水を手ですくって飲んだ。 周囲は変な目で見た。行動だけでなく、酷い表情、服装、髪型をしていたからだろう。髭剃りや髪を整えることすら、うまくできない。 風呂も、なかなか入れなかった。 ……人間らしい生活ができない でも、そんなことに構っていられなかった。 なんとかしなければ。 痛みと、このだんだん力が入らなくなっていく症状で、身動きが取れなくなりそうだ。 一時的に、寝たきりになったが、私は無理やり使い捨てカイロを、体中に貼り付け、足が痛くてたまらないのに、早朝散歩するようにした。 これだけ孤立した状態で、立ち上がれないほど筋力が落ちたら、本当に行き詰まってしまう。 朝、散歩している人にも出会ったが、見栄えも酷く、体が臭かったから、 みんな顔をしかめて、私から離れた所を歩いた。 携帯食みたいなものを手に入れては、なんとかしのいだ。 足りない所は、遠距離に住んでいる母が宅配便で送ってくれた。 これも頼みの綱だった。
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