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◆2016年(2)(5年前)
やっかいだったのは、痛みだけではなかった。
全身の痛みに加えて、全ての感覚のボリュームが上がった。
暑さも寒さも強烈に感じる。
扇風機に当たっただけで気持ち悪く、猛暑なのにもかかわらずエアコンも使えなくなった。
目に見えるもの全てが、強いストレートの酒を飲んでいるみたいに、強烈に脳みそを刺激した。
スーパーの商品売り場みたいに、ごちゃごちゃした所を見ると、頭がスパークしそうになる。
皮膚感覚や視覚だけではない。
音が滅茶苦茶大きく聞こえるようになり会話が困難になった。
家が何かの拍子で軋む音ですら、飛び上がるようにびっくりした。
それも程度が酷くなってきた。
他人の咳の音が聞こえるだけで、体がびくっびくっと反応する。
こんな状態で、どうやって生きていけって言うんだよ!
必死に体を動かし、なんとか食事をしていた。
何日も眠れない夜が続き、髪の毛が、ぼろぼろ抜けた。
脳みそが、ぐつぐつ煮立っているようだった。
寝ていても、布団と体が接触している部分が痛い。
布団の重さが辛いこともあった。
この異常な痛みもやっかいだったが、この脳みそのこむら返りみたいな苦痛が一層やっかいだった。
医師に痛み止めと睡眠薬をもらったが、鉄板で跳ね返されているみたいに効かない。
効かない上に、ふらふらして、さらに頭がまとまらなくなる。
しかし、朦朧としながら病院に行っても、どんどん薬が増えて、しまいには精神病院に入院しろと言われた。
その上、母まで精神病院に入院することを私に勧め始めた。
なんで精神病院なんだ?
こんなに痛い精神病ってあるのか?
痛いって嘘を言う精神病だって思われてるのか?
どうしても納得できないし、それで症状が改善するとは思えず、断って、症状を少な目に言い、睡眠薬を確保することだけを考えるようになった。
「なんだか、このごろ落ち着いてきましたね」
と医師が笑顔を見せたのを覚えている。
もう医者はダメだと思った。すべての人が敵に見えてきた。
本当に精神が狂ってきたかも。自分。
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