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失恋(6)
「先輩」
放課後、校門を出ようとした先輩の背中に抑揚のない声が投げつけられる。
先輩は、ビクッと肩を震わせて、恐る恐る振り返ると三白眼の少年……看取り人がこちらを見ていた。
彼の顔を見た瞬間、先輩は胸が締め付けられた。
彼と最後に顔を合わせて話したのはいつだったろうか?商業施設での出来事が衝撃的過ぎてそれより前のことなんてすっかり忘れてしまったが、そんなに時間は経っていない。経っていないのに彼の顔を見た瞬間、懐かしさと痛み、そして愛おしさに涙が出そうになる。
(泣いちゃダメだ)
泣くのはしっかりと彼の言葉でフラれてからだ。
そう自分に言い聞かせて先輩は笑みを浮かべる。
「久しぶりだね。どうしたの?」
先輩は、動揺を隠しながら話す。
いつも通りの穏やかな口調で。
しかし、看取り人は、先輩の声を聞いて三白眼を顰める。
「先輩……何かあったんですか?」
先輩の心臓がドキンっと跳ねる。
なんでいつもは馬鹿がつくくらい鈍感朴念仁なのにこうことには敏感なのよ!
先輩は、胸中で叫びながらも笑みを崩さない。
「そんなことないよ。いつも通りだよ」
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