失恋(6)

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 先輩は、鼓動が飛び出そうになるのを抑えながら話す。  看取り人は、じっと先輩を見る。 「嘘ですね」  先輩は、ぎゅっと右手を握りしめる。 「嘘なんてついてないよ。何でそんなこと言うの?」 「先輩を見れば分かります」  先輩は、思わず自分の顔を触る。  ひょっとして表情に何か出ていたのだろうか? 「顔には出てませんよ」  看取り人は、三白眼をきつく細める。 「……!嘘ついたの⁉︎」 「ついてません」  看取り人は、首を横に振る。 「言ったはずです。先輩を見てれば分かるって」  先輩の切長の右目が大きく見開く。 「で?何があったんです?」  看取り人は、先輩の鼻先まで顔を近づけて質問する。  先輩は、羞恥のあまり顔を真っ赤にして右目を反らす。 「ひょっとして……」  看取り人が三白眼でじっと睨む。  先輩は、顔をさらに真っ赤にして唾を飲み込む。 「好きな人が出来たんですか?」  ……へっ?  先輩の顔から急激に熱が引いていく。 「昔、小説で読みました。好きな人が出来ると急に態度が変わることがあるって。特に異性に対して」
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