失恋(6)

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 看取り人は、それこそ小説の文面でも読み上げるみたいに抑揚なく、淡々と口にする。  まるで先輩に好きな人が出来たのか?その事実だけを確認するように。  それ以外の感情など何一つ持たないかのように。  先輩は、心臓の鼓動が急激に静まっていくのを感じた。それと同時に冷たくなったお腹の底から沸々と黒く重いものが湧き上がってくるのも……。  これは……怒りだ。  先輩は、切長の右目で看取り人を睨む。  しかし、看取り人はそれを自分の推理の肯定と受け取り、小さくため息を吐いた。 「やはりそうでしたか。もうお付き合いされてるんですか?」  先輩は、何も答えない。  ただただ看取り人を睨みつける。 「ひょっとしてその人に僕に近寄るなって言われてるんですか?束縛するのはあまり感心しませんが、そういう理由なら仕方ないありませんね」  そういう理由?  仕方ない?  先輩は、奥歯をギリっと噛み締める。  君にとって……私はそういう理由、仕方ないで片付けられるだけの存在ってこと? 「でも……せめて一言欲しかったです」  一言欲しかった? 「そうすれば僕だって割り切ることが出来たのに」  僕だって?
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