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「彼は……なんて?」
「……何も……。私が一方的に話して、さようならしてきました」
そう言って先輩は小さく笑う。
「……いいのかい?」
「はいっ。もうスッキリしました」
「……そうか……」
白髪の男は、小さく息を吐き、小さく微笑む。
「君がそう選んだなら……もう何も言わないよ」
「お世話をおかけしました」
先輩は、頭を下げる。
「頑張ったね」
白髪の男は、手を伸ばして優しく先輩の頭を撫でる。
冷たい……とても冷たい。
先輩は、切長の右目を震わせる。
白髪の男は、優しく目を細める。
「それじゃあ、君はやることが無くなった訳だけどどうするのかな?」
「……良かったら見ていてもいいですか?おじさんが手紙を書くのを……」
「もちろんだよ。むしろ嬉しい」
白髪の男は、先輩の頭から手を下ろし、バインダーを力なく持ち上げる。
「実は今日……手紙を書き上げないといけなくなったんだ」
「今日?」
先輩は、切長の右目を丸くする。
「なんで……そんな?」
「深い意味はないよ」
白髪の男は、小さく笑う。
「昨日も言ったけど……時間は有限。ただそれだけさ」
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