失恋(7)

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 小さく、力なく言葉にする白髪の男は何故か年齢よりも年老い、儚く見えた。 「君が側にいてくれたら……書けそうな気がするんだ。付き合ってくれるかな?」 「……はいっ」  先輩が頷くと白髪の男は安心したように笑い、万年筆を手に取ってバインダーに挟んだ便箋に向いた。  先輩は、何も言わずじっと白髪の男を見守った。  白髪の男は、便箋に万年筆の先を付ける。  押し付けられたペン先から黒いインクが沈むように滲み出る。 「僕はね。罪を犯したんだ」  白髪の男の突然の告白に先輩は切長の右目を震わせる。  白髪の男は、万年筆のペン先を便箋の上を歩むように進ませる。 「その時、僕は大学三年生で……一年留年してたので二十歳を超えていた。僕は……焦っていた」 「焦っていた?」  先輩は、首を傾げる。 「君は、性に興味はあるかい?」  白髪の男の質問に先輩の顔は一瞬で真っ赤になる。 「それは……そそそ……れれられ」  先輩は、動揺しすぎて言葉も舌も回らなくなる。  その様子を横目で見て白髪の男は小さく笑う。 「恥ずかしがることはないよ。若者の当然の欲求さ」
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