93人が本棚に入れています
本棚に追加
「おじさん!おじさん!おじさん‼︎」
先輩は、泣きじゃくり、叫んだ。
「先輩」
先輩の肩に温かい温もりが優しく落ちてくる。
「先輩……大丈夫ですよ。落ち着いてください」
耳に入ってくる抑揚のない、しかし心地よい声。
取り乱していた先輩の心がゆっくりと静まっていく。
先輩は、涙に濡れた切長の右目で声の主を見る。
三白眼の綺麗な目がこちらを見ている。
「君……」
「もう大丈夫ですよ」
彼……看取り人は、抑揚のない声と乏しい表情で告げる。
そして意識のない白髪の男の前に跪く。
「探しましたよ」
看取り人は、白髪の男の顔をじっと見る。
そして言う。
「僕は看取り人です」
看取り人の発した言葉に先輩の切長の右目が大きく見開く。
「貴方と最後の時を過ごす為に参りました」
最初のコメントを投稿しよう!